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昼ごはん、何食べる?

 みなさん、血圧をはかりましたか? 今回も食事と血圧のお話です。普段の生活の中で、塩分を控え、カリウムを取るコツを、公衆衛生学が専門の三浦克之・滋賀医科大学教授に語ってもらいます。

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 血圧を上げる栄養素の代表格はナトリウムですが、血圧を下げる効果が期待される代表格はカリウムです。カリウムは、ナトリウムを体外に排出するのを助けてくれます。カリウムを多く取ることで、血圧の低下だけでなく、脳卒中のリスクなども下げられることがわかっています。

 多くの日本人は、ナトリウムが多すぎて、カリウムが少なすぎる食生活を送っているので、ナトリウムとカリウムの比率「ナトカリ比」のバランスが取れた食事をするには、まず減塩をしたうえで、カリウムを増やすことが大切になります。

 では、何をどうやって食べたらよいのでしょう?

「丼もの」よりは定食を

 ナトリウムをできるだけ控えるコツとしては、まず、汁物の汁を残すこと。塩分は調味料に多く含まれているので、麺類なら汁は残します。汁ごと食べる「丼物」よりは、おかずとごはんが別になった「定食」のほうがおすすめです。汁ごと食べるカレーライスも、けっこう塩分が多いですよ。

 また、味見をせずに、むやみに調味料をかけるのも禁物です。家庭では、卓上に調味料を置かない、というのも減塩のひとつのコツです。味が足りないと感じるときは、酢や香辛料を使ったり、薬味を使ったりするのもおすすめです。

 他にも、漬けものは控える、みそ汁は1日1杯にとどめる、減塩の調味料を使う……なども工夫できることですね。

 日本高血圧学会では、血圧が高い人の塩分摂取量を、食塩換算で1日6グラム未満とするよう提唱しています。食塩なら小さじ1杯ほど、しょうゆなら大さじ2杯分くらいに相当します。最近は、コンビニのおにぎりなどにも、食塩含有量が表示されています。レストランでも、塩分量を表示していることがあるので、外食や中食が多い、という人は少し気にしてみてくださいね。

普段飲むアレにも、意外と多いカリウム

 次に、カリウム。カリウムは、野菜や果物に多く含まれています。食事摂取基準では、カリウムの目標量は男性3000ミリグラム以上、女性2600ミリグラム以上。国が示す「野菜1日350グラム」と「果物1日200グラム」を実践するのが目標です。

 野菜の小鉢は1皿が約70グラムほどなので、「小鉢を1日5皿分」と考えて、食事に添えてみてください。ホウレンソウのおひたしなら、小鉢一つでおよそ360ミリグラムほどのカリウムが含まれていますよ。

 また、果物もおすすめです。バナナなら1本で360ミリグラムのカリウムが取れます。リンゴ半分、ナシ半分、ミカン1個なら、それぞれおよそ150ミリグラム前後。これらを1日1~2種類、取れるとよいですね。

 食事で取ることがむずかしい時は、100%の野菜ジュース(無塩のもの)や、牛乳などでもカリウムを摂取することができます。意外と知られていませんが、牛乳なら200ミリリットルでミカン2個分、カフェオレなら1杯でミカン1個分と同じくらいのカリウムがふくまれています。

カリウムを取れば、しょっぱくてもOK?

 時々、「腎臓が悪いので、カリウムは食べられない」という人もいます。慢性腎臓病で、治療を受けている人は摂取制限があるので、主治医に相談してください。でも、高血圧と糖尿病はあるけれど、腎臓病までは進んでいない、という人は、腎臓病に進むことを防ぐためにも、カリウムをぜひ摂取してくださいね。

 また、一部の報道で「カリウムをたくさん取れば、ナトリウムをどれだけ食べても大丈夫」といった内容を見かけますが、これは間違いです。多すぎる塩分も、カリウム不足も、それぞれ独立して血圧を上げる要因になります。血圧を下げるためには減塩が必須であることは、忘れないでください。塩分の取り過ぎは、胃がんのリスクも高めますよ。

 日本高血圧学会は2023年に、厚生労働省の委託事業で「ナトカリ手帳」をつくりました。減塩や、カリウム摂取のコツがまとめられています。インターネットから無料でダウンロードできるので、参考にしてください(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001309228.pdf別ウインドウで開きます)。

 さて、今日の昼食はコンビニで買いますか? 食堂や定食屋さんに行きますか? そのときにはぜひ、野菜料理の「小鉢」や「総菜」を1品でも、取り入れてみてください。

 次回は、血圧と運動を考えます。

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お昼ごはん、何食べる?

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